そうだ漫画で歴史を描いてみよう  

私の父は中学校の社会科の教師で、18歳で教師になり定年まで勤め上げ、80歳で天寿を全うした。 私は終戦時3歳でぎりぎり戦前派である。外地(朝鮮)から引き揚げてきた父は、戦後になって社会科の教師なのに、息子に不思議なことに戦争の話は 一切しなかった。わたしも中・高生の時代は歴史に興味がなかったので何の違和感もなかった。それでも何かの折に、その頃聞きかじった自由主義的な評論家の 平和主義の言動について父に言ったら、「どうせ戦時中に便所の中で言っただけなのに、今頃になって偉そうに言う」と強い口調で吐き捨てるように言った。 それから私はますます父とは戦争の話をしなくなった。

父の遺品の中に教師時代に書いた歴史に関する手書きの論文が数編あった。 かなり厚い原稿の表紙の上に(教育委員会のスタッフと思われる)審査員のごく短い賞賛の言葉を走り書きした一枚の小さな用紙がセロテープで貼ってあった。 父の論文の内容は、戦前と戦後の180度の(教育方針の)転換に対する教師の複雑な思いが連綿と記されていた。要旨・結論が不明瞭で、時代の子である 父の葛藤がおもんばかれ、何だか読んでいて切ない気持ちになった。 その論文の中に「将来、誰かが新しい客観的な歴史の記述をする人が現れることを希望する」とあった。

私は、高校時代から漫画を描いていて、これまで単行本を2冊出している。 「そうだ、漫画で歴史を描いてみよう」ある日唐突に私はそう決心した。 思い出してみるに、中学校、高校と歴史の授業は江戸時代まではやけに詳しく覚えさせられたが、大正・昭和時代に言及する前に3月が来てしまいそのまま 終わったと記憶している。そのことに誰も文句は言わなかった。あれは中学校、高校の教師の怠慢・無計画性によると思っていたが、そうじゃなくて国が 意識的に現代史を端折っていたということに気がついたのはずっと後のことだった。極論すれば私の時代の学生は本当に大事な時代の国の歴史をまともに 習っていない世代なのだ。

街の書店の棚にある漫画の歴史全集(ほとんど小・中・高生用)を立ち読みしたが、通り一遍の内容で、しかも作者・監修者は(たぶん)定年退職した大学の 名誉教授。実際に描いた漫画家は裏に名前が一行載っているだけという不当なあつかいで、漫画家の端くれを自負している私としては少なからず腹立たしい。 ここは是非とも、作者と画家が一体となった一人で描いた新しい歴史漫画を私の手でつくらなければならない。

描き始めたときはどんな形になるか、別に採算があるわけではなかった。まあ章立てにすれば大きな方針がなくても取りかかれるということで、最初に手をつけた章は そのころ興味のあった「ドーリットル空襲」。何となく6ページの小品ができた。なんか意外と描くことが楽しい。それからはちまちまと大した苦労もなく次々と 新しい章を描いていき、いつの間にか「第二次世界大戦」の「部」250ページができてしまった。そうなると、なぜ戦争をしなきゃならなくなったのかその遠因を 描かなきゃならんなあと、黒船にまでさかのぼって、「明治・大正・昭和初期」の部800ページができた。これでもすっきりしないので、「第一次世界大戦」の部を描き、 もうそれからは制作意欲が止まらない。「戦後史」の部は中国共産党、朝鮮戦争、ベトナム戦争に波及。こうなったら「各国史」の部もいるなあという事で、 アメリカ史だけでも80ページはある。というわけで次々と新しい部が生まれ、気が付けば2000ページを超えていた。描きだしてから何と14年という月日がたっていた。 しかもいまも新しい章を描き続けている。作画のために読んだ歴史資料本が1300余冊。事実の羅列だけでなくなぜ、そういう事件が起きたのかをごまかさないで、 わかる範囲でできるだけありったけ「てんこもり」に描くという方針を貫いたつもりである。これがこの歴史漫画のタイトルの所以である。 中三の孫に、おじいちゃんのホームページを覗いたら歴史のテストは満点とれるよ、将来大学入試にも役立つぞ、と宣伝している。

そうです、私はホームページを作ったのです。 ネットの時代である。いつかはどこかの出版社に持ち込もうかとぼんやり思っていたが、とりあえずネットで公表して、それが評判になり出版社が話しかけてくるという、 誠に妄想としか言いようのない甘い夢をもち、それを実行に移すことにした。 ホームページ作成を他人に頼めば初期費用として20余万円、変更のたびに追加の費用がかかる。それは効率が悪いということで、一大決心、自分でホームページを 作ることにした。HTML言語を悪戦苦闘して勉強、最低限の技術を習得し、数年前からネットに載せています。 という事で、よかったら、お暇でしたら、覗いてください。

中原とほるのホームページ http://www.manga-nakahara.sakura.ne.jp/
私のホームページにはこれまで私の描いた他の漫画作品も載っていて、4000ページ以上の巨大(?)ホームページです。

ここでお話しした歴史ものを見るのであれば以下のようにアクセスして下さい。
「中原とほるのホームページ」
→「これからの作品」→「てんこもり近・現代漫画日本・世界史」
→「てんこもり近・現代漫画日本・世界史」目次→ここから各章が閲覧できます。


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